最近注目を浴びているクラウドソーシングサービス。国内ではランサーズとクラウドワークスの2つが有名ですが、実は歴史は結構古く、老舗のElanceはなんと1999年にサービスを開始しています。またこのElanceともう一方の大手oDeskが合併して生まれたUpworkは、登録しているフリーランサーは1,000万人以上、クライアントは400万以上、年間の取引実績は1,000億円以上と、桁外れの大きさです。
そう考えると日本のクラウドソーシング市場は世界と比較すると10年以上も歴史的に遅れており、規模的にも100分の1程度の非常に小さな市場です。
日本国内のクラウドソーシングサービスのポテンシャル
何故ここまで差が出るかというと、やはり日本語という言語の壁があるからだと思います。
もし日本人の全てが英語をネイティブに話せるのなら、ランサーズやクラウドワークスを利用する理由はほぼゼロでしょう。
もちろん日本人固有の気質や仕事の考え方等により、日本人に発注したいという人もいるかと思いますが、クラウドソーシング市場は数の原理で成り立つので、やはり登録しているフリーランサーの数とクライアントの数がサービスの強さの差となります。
そう考えるとランサーズやクラウドワークスが社是のように唱えている、「時間と場所を超えた新しい働き方」という考えは、ある意味矛盾しています。
日本に閉じたマーケットにおけるプレゼンスということは、場所を超えられていないからです。
そういう意味ではランサーズやクラウドワークスが世界で戦える可能性はほぼ無く、日本のマーケットに閉じたサービスであり、この両社は日本のマーケットのパイの奪い合いをしています。
もしこの二社が海外で勝負できるとしたら、それは日本固有の価値観に対して仕事を発注したいというニーズを海外から集めることです。
例えば、かわいいアニメのキャラを描いてほしいとかでしょうか。ただ、いずれもスケールには限界があります。
そのように聞くと世界と比較するとあまり魅力的には思えない国内のクラウドソーシングサービスですが、それでも世界的な流れには抗うことはできず、このような働き方の波は徐々に国内にも広がりつつあります。
私自身もこの二つのサービスは、サービス開始当初から利用しており、ここ数年で利用者が増えてきたこともあり、ある程度使いこなすノウハウを持っていれば、それなりに機能するサービスとなっています。
私は仕事を発注する側の立場でしか利用していないので、これまでの利用経験を元に感想を述べていきたいと思います。
ランサーズとクラウドワークスの傾向
双方のサービスをかれこれ5年以上利用していますが、どちらかというとランサーズの方を使っています。
その理由は特になのですが、やはり歴史がクラウドワークスよりもランサーズの方が古いので、その分登録しているフリーランサーが多いというのもあります。
またあくまで個人的なイメージですが、ランサーズは楽天っぽく、見た目もやぼったいけど、でもなんだかんだで使われている。
クラウドワークスは洗練された感じだけど、意識高い系のフリーランサーが多い、というイメージです。
実際に5年程前に同様の案件を双方に登録した時、ランサーズの方は、どうしても仕事をとりたいというフリーランサーが多いのに対して、クラウドワークスは、日給5万円です、みたいな強気のフリーランサーが多く、仕事をとりたいのかどうなのかが分からないフリーランサーが多かったイメージです。
ただ最近は、ウェルク問題もあり、非常にリテラシーの高さに関係ないフリーランサーが大量に双方のサービスに流れ込んできており、ここ数年で双方のサービスともかなり毛色が変わってきています。
これまでにクラウドソーシングで発注した仕事
そんな中、私がこれまでに発注した案件の結果を記載しておきたいと思います。
Webサービス開発開発
- 予算:50万円
- 提案件数:15件
- 提案額:30万円~100万円
- 支払い額:40万円
- 満足度:★★★★★
PC向けのウェブサービス開発を予算50万円を目安に発注しました。
こちらはランサーズとクラウドワークス両方に発注したのですが、圧倒的にランサーズの方が現実的な提案が多く、ランサーズで応募のあった方に発注しました。
ランサーズでは10件ほど応募があり、過去同様のサービス開発の実績があり、費用感的にも割安価格を提示していただいた方に発注して、当初予算50万円で考えていた案件は40万円で開発することができました。
この時に発注した開発者の方が非常に優秀な方で、こちら側でしっかり要件定義とデザインを固めさえすれば、非常にスムーズに作業は進み、個人的には大成功という感じでした。
ジャンル特価型ソーシャルアプリの開発
- 予算:100万円
- 提案件数:19件
- 提案額:50万円~200万円
- 支払い額:未成約
- 満足度:★★★★★
特定カテゴリに特化したソーシャルアプリの開発を発注しました。予算は100万円です。
結果的には発注にはいたらずに終わってしまいました。
その原因は、こちらからの発注条件において、要件が詰め切れていなかったので、提案をもらった内容にも具体性がなく、この段階で100万円の発注をかけるまでに踏み切れませんでした。
この時の経験はクラウドソーシングを使いこなしていくにおいて非常に勉強になりました。
キャラクターデザイン
- 予算:10万円
- 提案件数:16件
- 提案額:3万円~20万円
- 支払い額:5万円
- 満足度:★★★★★★★★★★
こちらは、テーマにそったキャラクターをデザインしてもらって、そのキャラクターの数パタンのポーズをイラストレータデータとして納品してもらいました。予算は10万円です。
この時はランサーズでだけで募集したのですが、複数提案があり、各デザイナーさんの過去のポートフォリオ等を確認しながらテイストが私好みのデザイナーさんに発注しました。
こちらからはデザインコンセプトや、具体的にモチーフにしてもらいたい絵素材や、参考としてもらうような物等を一通りそろえて、それさえ見ればデザイナーさんは自分でアイデアを出したりと検討したり何かを考えたりする必要はなく、すぐデザイン作業に取り掛かれるくらいまでに要件を落とし込んで伝えました。
その結果非常に満足度の高いアウトプットを納品いただき、費用も5万円程度と当初の予算の半額程度で対応いただけました。
この時のデザイナーさんは、仕事のスピードもすごく早く、クオリティも非常に高かったので、まさにこれがプロの仕事だ!と感動したものです。
この時の経験が、私のクラウドソーシングに対する評価を一気に上げました。
CMSツールの不具合解消
- 予算:3万円
- 提案件数:8件
- 提案額:5,000円~5万円
- 支払い額:5,000円
- 満足度:★★★★★
こちらはCMSツールに不具合が発生したので、サーバ環境等を調べてもらいこの不具合を解消してもらう作業を発注しました。
結果的には最安値を提案してきた人に発注して、一瞬で解決してもらえました。
非常にさくっと対応してもらえたので、わかる人なら一瞬で解決できる案件であり、そのような人がサービス上で簡単に見つけることができて非常に助かりました。
サービス利用の感想のアンケート
- 予算:1万円(単価100円)
- 応募者数:100人
- 支払い額:1万円
- 満足度:★★★★★
こちらは特定サービスを利用してもらって、その利用した感想を述べてもらうというタスク型の発注をクラウドワークスで発注しました。
実際の作業時間は3分程度の内容です。
100円程度の対価で100人も応募があるのかなと最初は不安でしたが、締め切りが迫るにつれて応募者数が増えて、無事100人分の応募を集めることができました。
対応内容も3分程度でインターネット環境があればだれでもできる作業だったので、100人も問題なく集まったのですが、そこで得られたアンケート結果等は、対価をもらう事が背景にあるので、あまり辛辣な意見等がなく、普通の感想みたいなのが多くて、しっかりと感想を書いてきてくださるユーザーさんもいましたが、中には明らかにちゃんと使っておらずに適当な事だけを書いてきているユーザーさんも何人かいたので、その辺はちょっとがっかりでした。
ただ、そのようないい加減な応募は1割程度だったので、総合すると発注してよかったなと思いました。
SEO案件
- 予算:2万円
- 提案件数:13件
- 提案額:7,000円~10万円
- 支払い額:未成約
- 満足度:★★★★★
こちらは特定サイトに対してのSEO的な対応依頼を行いました。
特に大規模なSEO対応とかではなく、起こっている一つの事象を調べて、その対応策を提案してもらって実施対応してもらう案件です。
最終的には未成約で終わりました。
案件の特性上、やってみないと分からないというものになるので、提案いただいた方と何度か質問等のやり取りをしたのですが、明らかに原因を突き止められるという確証がなかったので、発注後問題が解決していない場合の支払等がもめると嫌なので、未成約となりました。
国内のクラウドソーシングサービスは使えるのか?
これに関しては、はっきりと言えます「かなり使えます!」
よく発注してからのトラブル等で、クラウドソーシングは地雷案件のたまり場や、使えないエンジニアが多い、等の意見を耳にしますが、まったくそんなことはありません。
非常に優秀なエンジニアさんやデザイナーさんは多数おられます。
私は仕事がら、普段からも大企業に属するエンジニアさんやデザイナーさんと頻繁にやり取りすることがあるので、その方々と部分的に比較することができますが、ランサーズ等におられるフリーランサーの方々は引けを取らないというか、むしろ大企業等に属している人たちよりも能力の高い方はたくさんおられます。
ただし、それらを使いこなせるか否かは、やはり発注者側の経験とスキルに非常に左右されます。
例えばウェブサービスを開発するときは、発注者側にディレクション能力がないと、まずうまくいかないでしょう。
最近ではその辺の課題に対して、ディレクターも含めた複数のフリーランサーをスカウトしてクラウドソーシング内にチームを作ってそこに対して発注する、等の方式も始まっていますが、これは相当難易度が高いかと思います。
そう考えると、優秀なエンジニアさん、デザイナーさんを見つけ出すのも、ディレクターのディレクション力次第ですし、その方々と費用対効果高くプロジェクトを進めていくことができるか否かもディレクション力次第です。
そんなの当たり前じゃん、みたいな声が出てきそうですが、しかしこれまではこのような発注者と受注者を結びつける場自体がそもそもなかったので、それを日本国内に生み出したランサーズは相当評価されるのではないでしょうか。
過去には楽天ビジネス等もありましたが、私も何度か使ってみようとしましたが、うまくいきませんでした。
そう考えるとランサーズの功績は非常に大きいと思います。
直接取引をしたいという人
このように非常に素晴らしいサービスに育ってきているクラウドソーシングサービスですが、一通りサービスを使いこなせるようになってきて、この人に次回も発注したいと思うようになってくると、次に誰もが考えるのが直取引したいということではないでしょうか。
実際にクラウドソーシングサービス上で一度やり取りして受発注して、2回目以降は直取引で継続的にやり取りしているユーザーもいると思われます。
ただしこれには非常に多くのデメリットがあるので、単純に直取引してできるだけ安くしたい、できるだけ多く稼ぎたいというのがきっかけだと、最終的には、逆に高くついた、安い単価で必要以上の作業をやらされた、ということもまた頻繁に起こっています。
また両サービスともに、サービス上で知り合ったユーザー同士は、その後全く両サービスのプラットフォームを介さなかったとしても、クラウドワークスの場合は5年間は直接取引をしてはいけない、ランサーズの場合はほぼ永久に取引してはいけない。もし直取引をした場合は違約金100万円もらいます。となっています。
クラウドソーシングサービスの直取引違約金に関して
この規約の法的効力や現実性には??と思うところもありますが、プラットフォーマーとしてはここの収益の柱が機能しないと事業がドライブできないので、上記のような規約を謳うことは理解できます。
ただ利用者視点で考えると、たまたま当サービス上で出会っただけなのに、未来永劫その二人は直接取引してはいけない、みたいな二人の関係を第三者に規定されるのって何か無理があるんじゃないかなと思うんですが、海外の大手サービス等はどうなっているのでしょうか。
恐らく国内のクラウドソーシングサービスよりも数段階先に進んでいるので、手数料逃れをしたら罰則!という北風的な抑止よりは、手数料逃れなんてしたら逆に損なくらいサービス利用のメリットが充実しているのかと推測したりしています。
海外大手のサービスは例えば、フリーランサーの面接機能がしっかりしていたり、実際にちゃんと稼働しているかをキータイピングやマウスの移動等をモニタリングする機能がそなわっていたりと、個人で直取引するよりも圧倒的に便利でお得な機能やサービスが、手数料以上の価値として存在しているので、バランスしているのかもしれませんね。
そう考えると、国内のクラウドソーシング市場も、海外レベルまで進化してより魅力的な場となり、働き方の新たなスタイルを強く後押しするサービスとなってくれることに期待したいところです。